武雄市の文化財
しおみじんじゃのかけぼとけ 1体:武雄市重要文化財・彫刻
潮見神社の懸仏 指定年月日 昭和48年2月20日
所在地 橘町大字永島 潮見神社

 懸仏とは、御正体あるいは懸鏡とも呼ばれ、円形銅版に毛彫りや立体的な神仏像をはりつけ、懸垂して礼拝の対象としたものです。中心像の多くは本地垂迹説に基づいて、薬師如来・阿弥陀如来・千手観音・聖観音・馬頭観音・虚空蔵菩薩・蔵王権現・不動明王などがあらわされています。
 本像は、潮見神社の鐘楼に奉納されていた懸仏で、面径24.5cmの銅製です。中心像の御正体は聖観世音菩薩の立像で、冠を頂き、両手は胸の前で合掌し、蓮弁の上に立っています。蓮弁の下には4段の台座が設けられています。総高19.5cm、像高11.5cmです。
 円形銅板は表裏ともに平滑で、御正体の上部に大きめの円孔が1つあけられています。裏面には「本興 / 建久六乙夘九月一日 / 奉再興 / 聖観世音菩薩 / 元禄五壬申九月念九日 / 肥之前州長崎村橘朝臣澁江公姿 / 拝立」の銘があります。このことから、最初に奉納されたのは建久6年(1195)であったと考えられますが、再興した元禄5年(1692)に全部を作り直したのか、聖観音像を作り直したのかは不明です。
 いずれにしても、記年銘がある懸仏としては数少ない資料であり、橘氏入部以前の建久年号や、橘渋江氏がこの地域から離れてしまっている元禄年の記年銘をもっており、当時の信仰生活を知る上からも貴重です。



潮見神社の懸仏

武雄市教育委員会 文化・学習課文化財係