平成22年度 武雄市図書館・歴史資料館ミニ企画展

植物図絵の世界

 第28代武雄領主鍋島茂義は、精力的に西洋科学の導入を図る一方で、絵画や能楽、鳥・虫類の飼育など多彩な趣味も楽しみました。花卉栽培については、大正末から昭和初期の聞き書きである「浄天公附近古武雄史談」に、「内外各種の草花を栽培セラレ、温室ニハ蒸気ヲ通シ四季花ノ絶ユルコトナカリキ」として領内の薬園に温室設備を用いて国内外の植物を育成していたことが記されています。また、天保9(1838)年から文久2(1862)年までの茂義の買いもの記録である「長崎方控」には、当時長崎の植物方であった野田源三郎の名がたびたび登場。茂義が源三郎から舶来や国内産のさまざまな植物類を購入していたことも確認できます。
 この度のミニ企画展示では、数百種の植物が写された「植物図絵」を中心に、武雄に伝わる植物関係の貴重な資料をご紹介します。
 

場所:蘭学館ミニ展示コーナー(観覧無料)
期日:平成22年8月20日(金)〜平成22年10月20日(水)

 
植物図絵
   
 

植物図絵

19世紀中頃 武雄鍋島家資料
武雄市蔵

 3冊の図絵には、クロカミラン・クロカミシライトソウなどの固有種や舶来種など、幅広い450余種の植物が描かれる。『浄天公附近古武雄史談』には「公ハ御薬園ト赤穂山トニ薬草を栽培セラレ植物図譜ヲモ編纂セラレタ・・・・」とあり、鍋島茂義が植物学全般へも強い興味を示していたことがうかがえる。絵はシュロラン(左)とノボタン(右)

 
   
 
クロカミシライトソウ・クロカミラン
   
 
 

『植物図絵』より クロカミシライトソウ(左)とクロカミラン(右)

 名は夫々「青モジズリ」(モジズリはネジバナのこと)、「クサフウラン」と記されるが、シライトソウの変種であるクロカミシライトソウとウチョウランの地域個体群であるクロカミランと考えられる。いずれも、黒髪山が唯一の自生地である。『黒髪雌雄岩ノ下邊』の付箋は、採取地を示したものと思われる。
 黒髪山は、武雄市山内町と西松浦郡有田町の境にある標高516mの山。天然記念物カネコシダの自生地で、その最初の発見地。植物層が豊富で、その数は数千種におよぶ。黒髪山県立公園は、昭和12(1937)年に指定された県内で最も古い県立自然公園である。

 
 
 
   
 

さく(さくよう)

19世紀中頃 武雄鍋島家資料

 題箋には「さく葉」「葉さく」と書かれる。弘化から文久年間(1844〜63)頃にかけての植物標本帳。和名・漢名のほか、ラテン名・オランダ名が添えられるものもあり、和名には地方名も記される。また葉の表面に直接オランダ語が記されているのも見られる。

 
   
さく葉帳
 
拾品考
   
 

【参考】拾品考

慶応元(1850)年
原資料:長崎歴史文化博物館

 著者は長崎の本草学者である野田源三郎、図は長崎派の画家石崎融済。題名の示す通り十種類の舶来植物について多色刷の図を附して論考したものである。この中の鳳梨(ほうり/パイナップル)の図は武雄の薬園で書写したものと記され(写真:赤枠内)、野田と武雄の深い関わりを語る興味深い記述である。

 
   
 


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