平成23年度 武雄市図書館・歴史資料館ミニ企画展

長崎方控の世界

 

 『長崎方控』は江戸時代後期、佐賀藩武雄領が行なった貿易港長崎でのさまざまな物品購入の記録で、その筆録された期間は、明らかなところでは天保9(1838)年から文久2(1862)年までの、実に25年間以上に及びます。
 武雄が所望する物品の注文は、武雄と長崎を行き来する家臣を通じて長崎の通詞や職人に依頼され、同様に彼らによって武雄にもたらされました。
 現在、武雄には約1万点余に及ぶ蘭学資料が伝えられ、「武雄鍋島家資料」としてここ武雄市図書館・歴史資料館に収蔵されています。『長崎方控』の記述と今に伝えられた資料とを照らし合わせることで、武雄の蘭学導入の克明な情報を知ることができます。
 『長崎方控』は、日本の江戸後期から近代にかけての科学技術史研究において、不透明であった多くの部分に解明の手掛かりを与えるものとして、現在注目を集めています。
 この度のミニ企画展ではこの『長崎方控』の一端をご紹介いたします。

場所:蘭学館ミニ展示コーナー(観覧無料)
期日:平成23年4月22日(金)〜7月20日(水月)

 

※参考  長崎方控と武雄    『長崎方控』の人々 

 
キリシテル キリシテル筆写分
 
 

キリシテル

19世紀中期 武雄鍋島家資料 武雄市蔵

 『武雄鍋島家資料目録』では「真鍮ポンプ」と記されているが、実際は「浣腸器」で馬用の浣腸器かと思われる。ポンプ部分に「K.kitsib」の銘があり、長崎の細工師金子吉兵衛の製作と考えられる。
 天保15(1844)年11月、吉兵衛への注文品中に「排気鐘 大キリステル」(右写真7品目)とあるのはこのことかと思われる。

 
 
 
枕時計 枕時計筆写分
 
 

フランス枕

19世紀中期 武雄鍋島家資料 武雄市蔵

 「フランス枕」と呼ばれるネジ巻き式の置時計。『長崎方控』中にも「枕時計」「置時計」は随所に見られるが、嘉永3(1850)年には「リン打枕時計並びに目覚付」とある(右写真赤線部)。専用の窓付の箱に収納され、全体に細密な唐草様の文様と金メッキが施されている。本体側面にはめ込まれたガラスから内部のゼンマイなど、細かな構造も観察できる。裏蓋を開くと銀色のベルがあり、まさに「輪打(リン打ち)」となっていることが確認できる。また、その下部に小さく「BECHOT A PARIS」と刻銘がある。

 
 
 
半円儀 半円儀筆写分
 
 

半円儀

19世紀中期 武雄鍋島家資料 武雄市蔵

 測量器具。「炮術容器」と書かれた専用箱に納められている。中心部分に「K.kitsib」の銘があり、角度は十二支で記される。
 天保15(1844)年11月、吉兵衛への注文品中に「繪圖引用半円」とあり、また、同年12月28日の「吉兵衛持越品」に「圖取用半円」(右写真赤線部分)とあるのは、これに当たると思われる。

 
 
 
ガラス容器 ガラス容器筆写分
 
 

硝子絵具摺

19世紀中期 武雄鍋島家資料 武雄市蔵

 『長崎方控』のなかで嘉永7(1854)年7月1日の記述の中で「硝子ニウ鉢 京都製 三ツ一組 棒三本副」(右写真赤点部)とあり、このことかと思われる。また弘化4(1847)年の注文のなかで「弓野ニ而製造之硝子器」とあり、弓野(武雄市西川登町)でもガラス製造が行なわれていたと見える記述がある。

 
 
 

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