市長提案事項説明要旨

 平成23年6月武雄市議会定例会の開会に当たり、市政運営の状況及び方針について私からご説明申し上げます。

 震災発生からまもなく3か月が経過しようとしております。連日報じられておりますように、震災の傷はいまだ癒えず、被災地の復旧・復興、被災者の生活再建にはほど遠い状況にあります。今般の震災による被害・影響はあまりにも甚大・深刻であり、まさに「未曾有の国難」であり、しかも国はメルトダウン、無政府状態であります。

 そうした観点に立ち、武雄市としては、震災発生直後から支援にいち早く着手し、また、積極的な取組みを行っているところであります。

 ご報告申し上げます。

 震災発生翌日の3月12日及び13日、区長会、婦人会、高校生ボランティア等の皆さん、そして牟田議長をはじめとする議会の皆さんたちと一緒に私も街頭に立ち、被災支援のための募金活動を行いました。

 翌14日には、市の備蓄物資を宮城県に向けて発送いたしました。その後、17日には、長期化が予想される被災支援を一元的に担当する部署として「被災者支援課」を設置しました。

 また、同日、市民の皆様や関係機関のご協力をいただき、ホームステイなどによって被災者の方1000名の受入体制を整えることを目的に「武雄市タウンステイ構想」をスタートさせました。

 この構想については随時改訂を行い、第二次構想では佐賀県の取り組みと連動し、受入人数を2000人に、また、第三次構想においてはコミュニティ単位での受入れや応急仮設住宅の建設準備などを新たに盛り込んだところであります。

 さらに3月末からは、被災地からの要請に基づいて、延べ12名の職員を宮城県気仙沼市に派遣し、避難所の運営など、ほぼ不眠不休で現地における支援活動にも従事させてきたところであります。

 もちろん本市の支援の取組みは、これにとどまるものではなく、義援金の拠出や物資の提供、温泉の無料提供や被災ペットの受入れなど、多くの市民の皆様方、企業、関係機関の皆様方にご理解、ご協力をいただいているところであります。この場を借りてお礼申し上げます。

 こうした市を挙げた取り組み、支援の輪に対して、私へのメールや市のフェイスブックページなどを通じて被災地、被災者の皆様方から「武雄市の迅速な対応はありがたい」といった感謝の声が多数寄せられているところであります。また、全国の自治体からも「武雄市の一丸となった取組みを参考にしたい」といった問い合わせを多くいただいているところであり、武雄市が被災支援のロールモデルとして認知されていることを、市民の皆様、企業、関係機関の皆様、そして議会の皆様にご報告申し上げるとともに、心より御礼を申し上げる次第であります。

 私は、この間の被災支援の取り組みの中で、二つの大きく特別な経験をしました。

 まず一つは、震災発生後の3月22日に、古川康佐賀県知事の特使として、ソフトバンク株式会社代表取締役社長の孫正義氏とともに福島県を訪問いたしました。武雄市を含む佐賀県の被災支援の具体的な取組みを佐藤福島県知事にご説明申し上げたところであります。

 また、併せて、福島第一原子力発電所から20kmから50kmの距離にある田村市にも赴き、避難所の被災者の方々から被災の状況や避難生活での悩みなどを聞かせていただきました。狭い体育館に最高気温5度という中で、660人の皆さんたちが押し込まれている。しかも、お風呂が一つしかなくて、おばあちゃんが2時間も3時間も待って入らないといけないような状況を見たときに、これが本当に同じ日本なのかと、本当に心苦しく、心を痛めたところであります。

 そういった中で、さらに行政としては、避難所ではより原発に近い自治体の方、具体的に言えば大熊町なんですけども、多く受入れている。ですから、田村市の皆さんたちは避難しようにも避難するところがない。より原発に近い大熊町の皆さんたちが、ここ(田村市)に来ているから、どこに私たちは行けばいいのかという話になっていて、非常に混乱されていました。

 そこで思ったのは、武雄市も例外ではないということであります。

 武雄市で一番玄海原子力発電所に近いところは、牟田議長さんの家のある若木の本部であります。ここが30km地点であります。武雄市役所は40km、一番遠い西川登町、嬉野市との境でもわずか50kmしかないんですね。

 そういった中で、我々がどういう対策・対応をとるのか、ということは、市民の負託を受けている政治家として、絶対に考えなくてはいけないと思っております。

 そして、もう一つ、昨日の全国市長会の中でも最も話題となった取組みが「チーム武雄」であります。

 去る5月10日から13日の4日間にわたり、武雄市議会の有志議員の皆さんが、宮城県仙台市若林区において、自らボランティアとして被災民家の瓦礫の撤去作業に従事されました。今回、私にもお声がけいただきましたが、現地において、共に作業していただいた牟田議長をはじめ8名の議員の方々には、この場を借りてあらためて感謝の意を表したいと思います。仙台市長からも、私から感謝の意を表して欲しいと伝えられました。

 私たちが被災地に入ったのは2か月たってからですが、たちくらみがするほどの臭気の中、初めてボランティアが入ったということで被災された方々は喜んでおられました。

 その中で、上田議員とも話しましたが、私たちが入ってもまだまだ時間がかかる、途方も無い作業と途方も無い労力が必要であり、これは国を挙げた取り組みが絶対必要であることも実感したところであります。

 今後、そうした観点から武雄市における防災行政を積極的に見直してまいります。このうちすでに着手いたしましたものについてご報告申し上げます。

 一つには、「武雄市地域防災計画」の見直しであります。従来、EPZと言われる原子力防災対策を重点的に充実すべき地域の範囲は、原子力発電所から8kmから10kmまでの圏内と想定されており、圏外にある本市については、国や県を含め防災計画の中には触れられておりませんでした。

 しかし、今回の福島第一原発の事故をみると、その範囲はEPZの範囲を大きく超えるものであります。しかも本当に、円の、EPZのあの範疇でいいのかと。飯舘村のものをみると、風向き等は考慮しなくていいのかといったことから、私たちとしては自ら市民の生命財産を守る観点から、主体的に動く必要があると考えております。こういった中で、8月末を目処に「武雄市地域防災計画」の大幅な見直しを進めていきます。

 もう一つは、「災害姉妹都市」の協定締結であります。

 やはり現場を見ることが一番大事であります。福島県の田村市、宮城県仙台市の若林区に入ってつくづく思ったのは、被害があったときに準備がなければ、必ずパニック、行政が混乱に陥るということです。

 そういった中で我々としては、平時の時に有事に向けて備えるという観点から、様々なことをする必要があります。その一つが「災害姉妹都市」の締結であり、私たちとしては、非常時、災害時に機動的な対応が可能となるよう、隣接自治体との連携を強化する。これは長崎県、あるいは佐賀県、福岡県の主要な首長には私の方から申し上げております。古川佐賀県知事や大阪府の橋下知事にも申し上げております。

 例えば、近距離の災害姉妹都市としては長崎県にある自治体、そして遠距離の災害姉妹都市としては、陸路、海路、空路でも行ける大阪府のある自治体を想定し、協定を締結し、平時には日常的な市民交流、議会との交流、そして我々職員との交流がぜひ必要だと思っております。

 次に、市民病院の民間移譲に関する住民訴訟の進捗状況について申し上げます。

 先の議会でも申し上げましたとおり、原告側の手続きが遅れに遅れ半年も遅れています。半年間。これによって審議が大幅に遅れています。

 今回、原告側から準備書面(4)が提出されましたが、その主張の内容が、当初から大幅に変更されています。私も国にいるときに代理人として様々な訴訟に関わってまいりましたが、こんなひどいことはありません。

 しかし、繰り返し申し上げますけども、住民訴訟そのものは住民の固有な権利であります。これを私はいたずらに、これはいけない、よいというのはありませんが、私が絶対に看過しえないのは、そこに政治の意思が働いているということであります。

 次回の口頭弁論は7月22日に予定されております。今後の裁判にあたりましては、武雄市が行った市民病院の民間移譲が、正当な手続きのもとで行われたことを誠心誠意説明し、明らかにしてまいる所存であります。

 これに加えて、市政の概況について二点、ご報告申し上げたいと思います。

 一点目は、新武雄病院のオープンであります。新武雄病院については、平成22年2月1日の民間移譲以降、これまで旧市民病院の施設を利用して運営がなされておりましたが、去る6月1日、国道34号沿いに新築、開院いたしました。

 これに先立つ5月22日に開かれました開院式典では、鶴崎直邦理事長があらためて「24時間365日、誰もが安心して医療を受けられる体制づくり」を高らかに宣言していただきました。4月に開校しました武雄看護リハビリテーション学校など関連施設も含めて、武雄市の医療環境のさらなる向上に寄与するものと大いに期待しております。これは単に医療の突破口にとどまるものではなく、企業誘致の一つの実現にもなりますし、皆さんたちからご指摘いただいておりました雇用の確保につながります。また、看護学校の若い学生が増えるという意味では、複合的な効果があるものと思っております。これは被災地の中でも武雄は本当に羨ましいと言われています。医療が不足、雇用が不足している中で、これは議会が一致団結して私たちが立てた企画立案に対して支持をしていただいたおかげだと思っております。

 二つ目は、北方町宮裾地区における 現在造成中の工業団地についてであります。

 いよいよ今年の秋、造成工事が完了、分譲開始の運びとなります。これもまた、雇用の創出をはじめ様々な経済波及効果が見込まれる企業の誘致については、これまでも佐賀県などとも連携し、積極的に取組んできたところでありますが、新工業団地の完成を契機として、早期の誘致実現を図ります。なお、この工業団地の名称につきましては、利便性をアピールする趣旨から「武雄北方インター工業団地」といたしたところです。

 最後となりますが、ここまで申し上げてきましたように、武雄市民の安全・安心、そして暮らしと雇用を守るため、より一層尽力してまいる所存であります。

 議員各位におかれましても引き続きご協力、ご支援、そしてご指導をお願い申し上げ、市政運営に関する私からの報告に代えさせていただきます。よろしくお願いします。

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