平成22年度 武雄市図書館・歴史資料館企画展

〜つわものどもが夢の跡〜

武雄の中近世城館

 武士によって築かれた城や陣は、砦のような小さなものも含めると、全国に5万城以上あったとされます。そのなかで姫路城や大阪城に代表されるような「高石垣に大天守」の城は200〜300か所程度です。大半の「城」は、中世、13世紀から16世紀に築かれた土造りのものですが、その実像は殆ど知られていません。
 今回の展示で紹介するのは、戦乱の時代に造られた「城館」です。「城館」の呼び名は、当初、有事の際に籠もる「城」が山にあり、城主が通常住まう「館」が平地に構えられていたものが、16世紀になると日常化した戦いに対応するために「城」の内部に館を移し、「城」と「館」の機能が一体化したことによります。
 「城館」は、単に地域の軍事拠点であるばかりでなく、城主(=領主)の生活拠点であることから、地域の行政府的な存在であり、地域開発・司法・治安維持の要でした。そのため「城館」を研究することは、文書にも記されていないその地域の具体像、今で言う「まちづくり」に迫ることにもなります。
 佐賀県では、平成14年から、こうした城館の実態を把握するため、各市町と協力して「中近世城館跡緊急分布調査」を進めています。武雄市を含む杵島郡の調査は20〜21年度に行われ、武雄市が所蔵する「城絵図」も対象となりました。この調査で、文献上で確認できる武雄の城館は、80にも上るとされました。これらの中で、現在でも位置が確認できる61の城館跡の中から主たるものをご紹介します。
展示状況

場所:企画展示室(観覧無料)
期日:平成22年10月1日(金)〜平成22年11月21日(木)



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 「城」の定義は、そもそもは「軍事目的で築かれた防御施設」です。ここでは、中世から近世初めにかけての「城のつくり」、「城絵図」について基本的な説明を掲載します。

城 の つ く り

城のつくり
   
 
 

山城の部位名称について

 曲輪(くるわ)  城内部の平坦地。建物などを配置したり、戦時には兵士が駐屯する場所。
 帯曲輪(おびくるわ)  中心となる曲輪の裾回りを廻る小規模な曲輪の1つ。狭く長い廊下状の形状のもの。
 腰曲輪(こしくるわ)  中心部の曲輪を補佐する小規模の曲輪。裾の一部を取り巻くが帯曲輪ほど長くないもの。
 主郭(しゅかく)・副郭(ふくかく)  城の中心部となる曲輪のこと。中心部が複数の曲輪で成り立つ場合は、中枢となるものを「主郭」、それを補佐する2番目に位置する曲輪を「副郭」と呼ぶ。
 土塁(どるい)  土を盛って築いた土手の一種。曲輪の縁に設けて障壁とした。堀や柵の基礎となることが多い。
 虎口(こぐち)  曲輪に設けられた出入口。門や木戸などが設けられた空間全体を指す。
 空堀[横堀](からぼり[よこぼり])  敵の侵入防止のために設けられた等高線に沿った堀。水は特にためない。
 堀切(ほりきり)  曲輪と曲輪の間や尾根の途中に設けられる「切り通し」状の堀。
 竪堀(たてぼり)  敵の横移動を妨げる目的で斜面に設けられる堀。

 
 

城 絵 図

住吉城絵図
   
 
 

 武雄鍋島家旧蔵の城絵図には、武雄市内にあった城館に関するものが全部で17枚確認されています。本来絵図は、領内・藩内の地形が描かれていることから、「第一級軍事機密」でした。軍事機密そのものである「城」絵図は、全国的にも類例が少なく貴重です。また、これらの絵図は、当時の測量技術を研究する上でも、現在は確認できない施設等を考える上でも、非常に役に立つものです。
 なお、武雄の城絵図は江戸時代後期ごろ、武雄領にて製作されたものと考えられます。しかし中世の城館は、元和元(1615)年の一国一城令で廃城になっており、「誰が・どのような目的で・廃城になった城を描かせたのか」はわかっていません。さらに、武雄領以外の城館図も含まれるため、「どういう基準で描く対象となる城館が選ばれたのか」など、「謎」が多い資料です。


城絵図を見るにあたって

 「凡例」に注目  絵図には左のような「凡例」が明記してあります。これと比較すると、絵図に描かれた地形が一目でわかります。
 文字の「書き込み」に注目  絵図には「地名」や「建物の名前」が書き込まれていますので、今の地名やなどと比較しながら見ると、より身近に城を感じることができます。
 「ランドマーク」に注目  絵図には「寺」「鳥居」など地域の目印になるものが描き込まれています。今あるものが描かれていたり、いなかったりしていますので、絵図の製作された時期を推測することができます。
※写真は、「宮野村住吉御城跡」「八並村諏訪山(御屋敷図)」「河良村御館跡之図」(いずれも武雄鍋島家資料)より

凡例

書き込み
 
 


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