平成23年度 武雄市図書館・歴史資料館ミニ企画展

平成22年度 新収蔵品展

 武雄市図書館・歴史資料館では、展示資料の充実を図るため、武雄に関するもの、また蘭学に関わるものを中心に新たな資料の収集を進めております。
 今回はそうした資料の中から、平成22年度に購入した資料を展示し、ご紹介します。


場所:蘭学館ミニ展示コーナー(観覧無料)
期日:平成23年7月22日(金)〜10月19日(水)


日本勇士加ゝ見貼込帖
   
 

日本勇士加ゝ見貼込帖

初代長谷川小信 画 武雄市蔵

 戊辰戦争に参戦した人物110名が紹介されている。図柄は、同作者の玩具絵(一枚刷錦絵 1枚に6人を掲載)と一致することから、この錦絵を裁断して貼込・製本したものと考えられる。
 人物の中には、武雄第29代領主鍋島茂昌(上総)、茂昌と同じ親類同格であった多久領主の多久与兵衛、また戦死した本藩小隊長嬉野弥平次らの姿もある。
 絵の左が鍋島茂昌。

 
   
   
 
 

 『武雄史』(石井良一著)には以下のような記載があり、この錦絵のことではないかと考えられる。

「此役に於ける武雄軍の働きは名声赫々たるものあり、江戸に於て西郷早く陸軍を握るか小鍋早く陸軍を左右するかとの評あり、江戸絵を発行し売り捌くものあり、肥前城御内鍋島上総様と大書し陣笠に陣羽織を穿ち乗馬袴着したる堂々たる体格の肖像を掲げ、其説明に曰く。
 鍋島上総、肥前の客老、文武政態聞高く、一方の将師、大任を蒙り奥羽を平定せし俊傑なり
この絵双紙を詮議したが遂に発見することのできなかったのは甚だ遺憾である。」

『武雄史』第四章第五節より

 
 

   
 

「海軍砲術教範」初版

カルテン著 武雄市蔵

 幕府が天保14年3月から天文方の蘭学者を動員して翻訳させた『海上砲術全書』(同年11月成)の原書。当時、書名の一部をとって「レイトダラート」または「ゼーアルチルレリー」と呼ばれた。
 第28代領主鍋島茂義はこの原書を入手できず、手元には筆写本(上中下3冊)しかなかったが、この年7月に筆写本の中冊と絵図を長崎の通詞西記志十に与え、翻訳を命じた。
 本原書(初版)は幕府旧蔵書本(国会図書館所蔵)しか国内に伝わらず、オランダ他ヨーロッパの古書市場でも稀覯書である。武雄蘭書としては初版も第2版も伝わっていないが、幕府とは別個に、独自に翻訳を進めた武雄蘭学の実態を知る上で、本原書(初版)はきわめて重要である。

 
   
「海軍砲術教範」初版

太砲玉行双六
   
 
 

太砲玉行双六

歌川芳藤 画 武雄市蔵

 戊辰戦争最中の明治元年(1868)に刷られた錦絵。
 双六仕立てとなっているこの作品は、西洋式軍備の大砲隊の様子が丁寧に描かれ、色彩豊かな錦絵や遊び方が描かれた袋や、それぞれの陣地の駒も揃っている。日本で初めて西洋式軍備が実践で用いられ、武雄からも最先端の軍備を以って多くの将兵が参加した、戊辰戦争の様を髣髴させる資料として貴重である。
 歌川芳藤(1828〜1887)は、子ども向きの組上絵、玩具絵、双六など数多く手がけた。芳藤の丁寧な作業ぶりが玩具絵の工夫に向いており「玩具絵の歌川」とも呼ばれたが、子どもの遊びに用いられるという性格上、残存数は少ないとされる。

 
 

拾品考
   
 

通航一覧所載写図他

武雄市蔵

 「通航一覧」は、19世紀半ばに徳川幕府が編纂した近世外交史料集成である。1566年〜1825年までの対外交渉に関する記録が、国別と長崎異国通商部とに大別して編集されており、現存のものだけでも正編322巻、付録22巻の膨大な量に及ぶ。
 図の総てが、この資料からの写しであるか未詳だが1804(文化元)年にレザノフが長崎に留め置かれた際に作られた、新地蔵屋敷内の仮屋敷図、1818(文政元)年に浦賀に到来したイギリス船フルテルス(ブラザーズ)号の図、南部藩の蝦夷番所の図などが含まれる。

 
   


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