平成25年度 武雄市図書館・歴史資料館企画展
 

武雄鍋島の蘭学

 

 武雄には、江戸時代後期から幕末にかけての全国的にも希少かつ貴重な多くの蘭学関係資料が残されています。「家資料」として、由緒、伝世も明らかな蘭学資料は、他に類を見ないといえるほど重要です。
 これらの資料の大半を蒐集したのは、武雄の領主鍋島茂義(1800〜1863)で、蘭学を大胆に受容する彼の姿勢は、佐賀藩藩主鍋島直正(1815〜1871)にも多大の影響を与え、幕末期、佐賀藩を日本最強の雄藩に押し上げることにも貢献しました。日本の近代化の出発点は武雄にあるといっても決して過言ではありません。今回、武雄市歴史資料館では、武雄から始まる西洋砲術の取り組みと蘭学の導入、それが佐賀藩や幕末日本の近代化に果たした役割を学ぶ企画展を開催します。
 また、九州国立博物館では、「江戸のサイエンス 武雄鍋島家の近代科学」(4月16日〜7月7日)が開催されるます。合わせて御観覧いただき、武雄に残された貴重な蘭学資料を身近に感じることの出来る一助となれば幸いです。
 下に展示品の一部を紹介します。
 

場  所:蘭学・企画展示室(観覧無料)
期  日:平成25年4月1日(月)〜平成25年6月2日(日)
     月曜休館(ただし、月曜日が祝日の場合は、その翌日)
開館時間:9時〜17時

 
 
 

  ホーウィッスル砲切型

 最近の武雄市歴史資料館での調査のなかで、西洋砲ホーウィッスルの実物大の切型が新たに発見された。
 もともと接合されていたはずの切型が、糊の粘着力が弱っていくつものパーツに分離し、さらに別個の資料として分類されていた。これを今回確認、復元し、修復を施した。本来、一括され保存されていたと思われる包紙には「天保六年 ホーウィッスル砲」と記されることから、天保6(1835)年にオランダからもたらされた大砲とその台架など一連の切型と思われる。
 砲身と、台架の平面図、側面図、車輪の平面図、側面図、また、附属する部品類などが、一式で現存する例は他にはなく、武雄鍋島家旧蔵の蘭学資料群のなかでも特に貴重な資料といえる。切型の中に多く描かれる円の中心に小さな穴が確認され、いずれもコンパツを用いて描かれた円であることにも注目したい。

 
ホーウィッスル台架
   
 

ホーウィッスル台架

武雄鍋島家資料 武雄市蔵

 西洋砲ホーウィッスル台架の実物大の切型、正面図(左)と側面図。この外に、実物大の車輪の正面図(ただし半円分)と側面図、各部部品図及びホーウィッスル砲の切型が一括で残されていた。
 
【参考】「ホウ井ツスル筒並台」図(図をクリックすると別窓で大きい画像が出ます)
ホーウィッスル砲と台架

 
   
 
 

  火薬・銃弾類

 戦国時代に日本に持ち込まれ、江戸後期まで国内で使用されていた火縄銃は丸弾を用い、弾丸を撃ち出すための胴薬(発射用火薬)、発射用火薬に点火する為の口薬の2種の火薬が必要であった。一発分の胴薬と弾丸をセットした早合等も工夫されたが、弾丸と火薬はあくまで別物であった。
 19世紀前半に、ごく小さな銅製のキャップに雷汞を填めた雷管が発明されたことで、口薬(点火薬)は役目を終える。その後、銃身に施された施条(螺旋状の溝)に適合した椎の実弾が現れ、これと発射用火薬をパッケージにした紙製弾薬包も作られた。
 更には、弾丸と発射用火薬を一体化させたリネン製の布弾薬が出現して弾薬装填の手間をいっそう簡便にするが、弾丸・発射用火薬・雷管を完全に一体化出来たのは、金属製薬莢が出現してからのことである。
 武雄には、こうした火薬・銃弾の発展の流れの一端を伺える資料がまとめて残されている。
 ※火薬の分析データは、別府大学 文化財研究所 客員研究員 溝田智俊氏にご提供いただいた。

 
   
 

シャープス社製銃弾

19世紀後半
武雄鍋島家資料 武雄市蔵

 アメリカ、シャープス社製のリネン製布弾薬。エンフィールド銃等に使用された。椎の実弾後部に巻かれたリネンが火薬室となっている。火薬室は薄紙で蓋をされ、中に粒状の発射用火薬が充填されるが、本資料からは失われている。銃弾自体はアメリカ製だが、硝石の原産地は、当時連合王国の植民地であった英領インドのガンジス川域、天然硫黄はイタリア・シシリー島、炭(炭素)は連合王国内で木本類を蒸し焼きにして製造、これらの調合を同国で行い、できた黒色火薬をアメリカ合衆国に輸出、鉛の弾頭を装着して製品化したことが明らかになった。当時の武器製造・流通が国際化していたことが判る。

 
   
シャープス社製銃弾
 
紙製弾薬包
   
 

紙製弾薬包

19世紀後半
武雄鍋島家資料 武雄市蔵

弾丸と発射用火薬だけを紙で包んだ紙製弾薬包。布製のリボンが見えるのとは逆の端に弾丸が入っている。佐賀藩では自作も成されたと言う。この薬包の作成地は不明であるが、中の火薬はシャープス社製銃弾と同じ産地であり、輸入品である。

 
   
 

展覧会チラシ  表  裏 (別窓)
 
参考 「江戸のサイエンス」ちらし(別窓)
 
 

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