平成25年度 武雄市図書館・歴史資料館企画展

武 雄

〜鍋島家・温泉・やきもの〜

 武雄の鍋島家は、もとは「後藤」姓を名乗っていました。12世紀に武雄に居を構えたとされ、以来、連綿と続いてきた家柄です。武雄市歴史資料館所蔵の歴史資料の大半は、鍋島家から寄贈を受けたものです。
 また、武雄の温泉は、730年頃に成立した「肥前風土記」にも記述が見られるほど古くから知られており、豊臣秀吉の朝鮮出兵の際は、多くの武将たちが保養に訪れました。
 やきものは、縄文時代から武雄でも焼かれていたと考えられますが、産業として成立する転機を迎えたのは400年余り前のこと。秀吉の朝鮮出兵のおり、後藤氏が朝鮮陶工団を連れ帰ったのが始まりです。
 今回、武雄市歴史資料館では、武雄を象徴する3つのキーワードで、武雄を紹介する展示を行います。

場所:蘭学・企画展示室(観覧無料)
期日:平成25年7月13日(土)〜8月15日(木)

担当学芸員のギャリートークは、:いずれも13:30〜
7月28日(土)・28日(日)・8月11日(日)


展示物の一部を下に紹介します。
(期間中、展示されていない場合があります)
 
 蒙古合戦勲功賞神崎(神埼)荘配分状
   
 
 

蒙古合戦勲功賞肥前神崎(神埼)荘配分状

武雄市重要文化財
1289(正応2)年3月12日
武雄鍋島家資料 武雄市蔵

 13世紀後半の蒙古襲来では、九州の御家人たちが多く動員され、命がけの戦闘を行なった。この資料は戦闘に対する褒美として、鎌倉幕府から後藤十郎宗明(武雄後藤家第4代)の子息五郎頼明に、神埼荘(現在の神埼市一帯)の土地の一部を与えることを示した古文書。こうした資料の原本が残る例は少なく、大変貴重である。

 
 

   
 

打裂羽織

武雄鍋島家資料 武雄市蔵

 打裂羽織(ぶっさきばおり)は、乗馬や帯刀の便のため背の縫い合わせが中ほどまで開いたままになっている羽織で、背割羽織などとも呼ばれる。
 この資料は単の薄羽織ながら、背に金糸の縫い取りがある3つの家紋及び飛龍の刺繍が配され、襟にも装飾が施されている。こうした意匠や石帯(写真左下)が付属することから、火事羽織ではないかと考えられる。
 『近世風俗志』(喜田川守貞筆/1837年〜江戸末期)には「火事羽折の背の下裂きたる物、多くは縫い目の所に種々の形を縫製等にして切り付けたり。けだし、その上下のみを羽折に縫い付けて、その間を石帯を通し前に結ぶなり。」とある。この資料でも、飛龍の飾りは上下のみが縫い止められている。

 
   
打裂羽織

肥前風土記
   
 

肥前風土記

武雄鍋島家資料 武雄市蔵

 『風土記』は、713年に政府が出した命令によって編纂された地誌。国ごとに土地の産物・地名の由来、古老の伝聞などを記録してある。
 この資料は、730年頃に成立した『肥前国風土記』をもとに、江戸時代に刊行されたもの。武雄温泉について「郡の西に温泉の出づる厳あり。岸峻しくて人跡まれにいたる。」との記述が見られる。

 
   

   
 

豊臣秀吉塚崎温湯掟書

武雄市重要文化財
天正20(1592)年
武雄鍋島家資料 武雄市蔵

 豊臣秀吉の朱印状。朝鮮出兵のため名護屋に駐屯した多くの将兵が、戦陣の疲れを癒すために武雄の温泉を訪れた。しかし、彼らが地元の人々に迷惑をかけることもあったことから、秀吉はこれを取り締まる掟を出した。地元のものに迷惑をかけないこと、宿賃日五文を支払うこと、屋敷周り等の木を伐採しないことなどを命じ、違反者には処罰を加えると記されている。

 
   
豊臣秀吉塚崎温湯掟書

後藤家御戦功記
   
 

後藤家御戦功記

武雄鍋島家資料 武雄市蔵

 安土桃山時代〜江戸初期の武雄後藤家の歴史や戦功などを記したもの。後藤章明から茂綱の子茂紀まで仮名交じりの文体で記載されている。多くの文書を引用しながら書き進められていることに特徴があり、それらの文書には現在は所在が確認されないものもある。その意味からも有益な資料といえる。後藤家の名前の由来や朝鮮陶工団に関する記述も見られる。

 
   

   
 

刷毛目皿(左)と絵唐津皿(右)

江戸初期 小峠窯跡出土

 市内には90カ所の窯跡が確認されており、JR佐世保線を境に北部系と南部系に大別される。北部系の武内町・若木町には17世紀初め、南部系の東川登町・西川登町には17世紀中頃から焼かれはじめた窯が多く存在する。橘町の窯跡は19世紀後半から大甕を中心に焼いていた。山内町には江戸時代初め、日本で磁器が生産されるようになった頃から明治に至るまでの窯跡がある。
 この資料は、国の史跡『肥前陶器窯跡』の一つである小峠窯跡から出土した陶器である。

 
   
小峠出土品


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