平成28年度 武雄市図書館・歴史資料館企画展

だんな様のお買いもの

 「だんな様」とは、江戸時代、諸般の中の小領主に用いられた呼び名です。藩全体を支配する領主、すなわち大名は「とのさま」ですが、佐賀藩の武雄領のような小地域の領主は「だんな様」と呼ばれたのです。この展覧会の主人公である「だんな様」は江戸時代後期の武雄領主鍋島茂義です。
 鎖国と呼ばれた時代、長崎はオランダを通じて西洋に、また中国に開かれた貿易港でした。茂義は天保3(1832)年、武雄の領主となったころから長崎に行き来する家臣や長崎の商人、阿蘭陀(オランダ)通詞(つうじ)らに命じ、さまざまな物品や知識、海外情報などを入手しました。その詳細を記したのが、武雄のだんな様の買い物帳「長崎方控」です。
 今回、この買い物帳の記述と実際に武雄市歴史資料館に所蔵される資料を対比させ、武雄のだんな様が、一体どんなお買いものをしたのかを紹介する展覧会を開催します。  チラシ(別窓で開きます) 

場所:蘭学・企画展示室(観覧無料)
期日:平成28年8月6日(土)〜9月4日(日)

ギャリートーク
13:30〜 8月7日(日)・13日(土)・14日(日)
18:00〜 8月19日(金)・31日(水)


展示物の一部を下に紹介します。

染付西洋人物図入れ子鉢
   
 

染付西洋人物図入れ子鉢

19世紀前半 武雄市蔵

 西洋の農村に見られるような風景・風俗が描かれる。裏側に「PR 18(あるいは13か)」の刻印、「PEASANT P.R.」の記載がある。「長崎方控」四の嘉永3(1850)年11月の注文に「蘭製ドンブリ」、同年12月23日の到来品に「蘭焼丼」とあるのは、出展資料のような品物であったのだろうか。

 
   

   
 

ショメル『日用百科事典』 19冊

フランス ノエル・ショメル編/オランダ J・A・シャルモット蘭訳
1778年 武雄鍋島家資料 武雄市

 フランスの司祭ノエル・ショメル(1633〜1712)が編集した百科事典(1709年刊)。正編7冊(1778年刊)・続編(補遺)9冊(1786〜93年刊)からなる。自然科学の項目を網羅した事典で、とくに植物学・動物学・医学・薬学の項目が多い。「長崎方控」三・四によれば、嘉永2(1849)年12月23日に「大ショメール、先以(まずもって)五冊」、翌3年正月4日に「ショメール十一冊」を入手している(合計で正・続16冊)。蘭訳原書の正編・続編をセットで入手、そして、さらに簡約版(オランダ、1802年刊)3冊(1巻目を欠く)も入手している。これら3種が揃って残るのは、武雄鍋島家本のみできわめて貴重である。

 
   
ショメル『日用百科事典』

気海観瀾
   
 

気海観瀾

青地林宗著 文政8(1825)年
武雄鍋島家資料 武雄市

 日本で最初に出版された物理学書で、江戸時代末期の窮理学(物理学)教科書。武雄に残るエレキテルと同じ形状の絵が付図として描かれており、上野俊之丞はこれをもとに製作したことが推測される。

 
   

   
 

錫製急須

江戸時代後期
武雄鍋島家資料 武雄市

 「長崎方控」中に、「錫湯瓶」「錫薬茶碗」「錫茶壺」などの注文の記載が見え、弘化5(1848)年には「錫水指」「錫湯瓶」の到来の記述もある。これらの急須は国内で製造されたもので、一方には漢詩、もう一方には松竹梅が彫されるが、輸入された錫により作られた可能性も否定できない。

 
   
錫製急須

摺立ガラス瓶
   
 

摺立ガラス瓶

19世紀前期
武雄鍋島家資料 武雄市

 武雄には三ノ丸窯で製造されたもののほかに、輸入等により領内に持ち込まれたと思われるガラス製品も多く残る。これは、型を用いて作ったガラス(「型硝子」)の瓶の表面を丁寧に研磨して仕上げたもので、「長崎方控」中の記述に多く見られる「摺立硝子瓶」にあたると思われる。口部は細く八角形になっている。

 
   


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