令和元年度 武雄市図書館・歴史資料館 特別企画展

津山×武雄交流展

蘭学の競演

 江戸時代の終わりごろ、時の武雄領主である鍋島茂義は西洋からの珍しい品々を蒐集。また砲術をはじめとする西洋の先進的な科学技術、いわゆる蘭学・洋学を研究し、佐賀藩が幕末における雄藩となる基礎を築きました。
 ところで、茂義はどのように蘭学・洋学の研究を進めていたのでしょうか?武雄は長崎に近く、長崎を通じてオランダ船がもたらす様々な情報や書籍類などから知識を得ていたことは間違いないでしょう。一方、日本各地でも蘭学・洋学の研究がおこなわれており、武雄ではその成果も取り入れていました。そのひとつが、津山藩ゆかりの蘭学者(洋学者)たちの研究成果です。
 津山藩からは、宇田川家や箕作家を中心に優れた蘭学者が輩出しました。彼らは藩主の侍医として江戸に在勤し、他藩の蘭学者たちと情報の交換をおこないました。幕府の仕事を請け負い、江戸参府のオランダ人達と交流をもち、多くの蘭学資料にふれる機会をえました。その成果は膨大な著作物として残され、武雄にもそのいくつかが残されています。津山の蘭学者たちは、江戸蘭学の中心をなし、日本における西洋の科学技術の受容に大きく貢献したのです。
 今回、津山市教育委員会のご協力により、津山と武雄による交流展を開催することができました。津山洋学資料館の皆様をはじめ、交流展の開催にご協力いただいた皆様方に感謝いたします。交流展は、第一弾として津山洋学資料館で展示をおこないました。武雄市図書館・歴史資料館でおこなう展示は第二弾となります。津山と武雄が誇る多くの貴重な資料による“競演”をお楽しみください。
 

津山洋学資料館バナー

 

場所:蘭学・企画展示室(観覧無料)
期日:令和元年11月16日(土)~12月15日(日)
開館時間:金・土曜日は9時~21時、それ以外の日は9時~18時
 
特別講演会 12月1日(日)14時~
「津山が誇る洋学のはなしー宇田川三代と箕作一族を中心にー」
講師:下山純正先生(津山洋学資料館元館長)
ギャリートーク
11月16日(土)・24日(日)・12月8日(日)・14日(土)
いずれも14時~

 

展示物の一部を下に紹介します。  チラシ 
 

萬国新話
   
 

萬国新話

重要文化財
森島中良編 寛政元(1789)年
武雄鍋島家資料 武雄市蔵

 海外地理学書などにより、海外事情を述べた書物で、鎖国時代の海外事情を知る上で啓蒙的役割を果たしました。アジア・ヨーロッパ・アフリカ・アメリカのうち、アジアを記したもののみ刊行されました。武雄鍋島家には巻三・四が残されています。

 
   
 
   
 

新訂増補和蘭薬鏡

重要文化財
宇田川玄真訳出・宇田川榕菴校訂
文政13(1830)年
武雄鍋島家資料 武雄市蔵

 蘭学者で津山藩医の宇田川玄真が、オランダの本草書や薬説など西洋医学に関する諸説を訳出してまとめ、玄真の養子である宇田川榕菴が校訂を行った、日本で最初の西洋薬学書。西洋医学で用いられる薬物の形状や効能、治験、製剤などがまとめられている。初編は文政2(1819)年に刊行されました。当初、榕菴は初編を刊行後、毎編を刊行する計画でしたが中絶し、文政11年から『新訂増補和蘭薬鏡』を刊行しています。

 
   
新訂増補和蘭薬鏡
 
植学啓原
   
 

植学啓原

重要文化財
宇田川榕菴著 天保5(1834)年刊
武雄鍋島家資料 武雄市蔵

 植物学入門の概説書。スウェーデンのリンネによる新しい学説を取り入れ、植物の分類、形態、生理、解剖などが科学的に論じられています。「葯」「柱頭」「花柱」などの用語は榕菴がつくったもの。顕微鏡観察による精密な植物図もあり、箕作阮甫は序文で「榕菴がアジアで初めて植物学を紹介した」と述べています。

 
   
 
   
 

製薬学提要

重要文化財
ガイガー著 1840年
武雄鍋島家資料 武雄市蔵

 植物アルカロイドの研究者として知られるドイツの化学者で薬剤師であるフィリップ・ローレンツ・ガイガーの『Handbuch der Pharmacie』をオランダ語訳したもの。『製薬学提要』は医薬鉱物学、植物学及び動物学を含む、医師、薬剤師の講義と自習のための薬局のハンドブックです。武雄鍋島家資料「西洋書原簿」にある「一 製薬書 ゲイケル 原帙入 二冊」は、これに当たる可能性があります。

 
   
製薬学提要
 
窮理学初歩
   
 

窮理学初歩

重要文化財
ファン・デル・ビュルフ著 1847年
武雄鍋島家資料 武雄市蔵

 幕末の蘭学塾で全国的によく使用された窮理学(物理学)教科書。同書所収のエレキテルの図が武雄に残されたエレキテルと同タイプのもの思われます。嘉永6(1858)年12月21日に長崎の上野俊之丞が製作した「エレキテル一式 但弐箱」が武雄にもたらされています。上野俊之丞は、武雄の注文に応じ、原図と忠実な製品を制作して納入したと推測されます。また、『気海観瀾』の附図にも同様の図が掲載されています。

 
   

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